最高裁判所第二小法廷 昭和25年(れ)160号 判決 1950年6月23日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人松尾菊太郎の上告趣意第一点について。
しかし、原判決は、被告人が石橋熊治らから金品を受け取ったのは、被告人が長崎縣南高來郡布津村における小作人側の農地委員として公務に從事中その職務に関し賄賂として受け取ったものである旨判示していると見られるし又た右事実は原判決引用の証拠である被告人の原審公判廷の供述に徴して是を認める事ができる。されば何ら所論のような理由不備は存しない。
同第二点について。
しかし、公判調書には、弁護人出頭の場合にその氏名を記載すれば足りるものと解すべきであって、弁護人が所論判決言渡期日に出頭しなかったとすれば、その氏名を記載しなかったことは、当然であるし、仮に弁護人が出頭したのにその氏名を書き落したものとしても、直ちに右公判調書を無効であるということができない(昭和一一年(れ)第二二〇〇号同一二年一月二三日大審院判決参照)。
同三点について。
しかし、旧刑訴第三六〇条第二項にいう「刑ノ減免ノ原由タル事実」というのは、刑罰法規が特定の事由のある場合に必ず刑の減免をしなければならないと規定した事由を指すものであって、裁判所の裁量に委ねられた場合は、これに該当しないことは、当裁判所の判例とするところである(昭和二二年(れ)第一六七号同二三年一月二七日第三小法廷判決判例集第二巻第一号一一頁参照)。論旨は、理由がない。
同第四点について。
しかし、收賄罪において收受金品を返還したか否かは必ずしも判示することを要しないものである。されば原判決には、所論のような違法はない。
よって、刑訴施行法第二条旧刑訴法第四四六条に従い、主文のとおり判決する。
この判決は、裁判官全員一致の意見である。
(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)